2023年9月17日、18日の両日、東京の国立オリンピック青少年センターで、第七回世界禅武医気易芸健康総合大会、第二十回世界中医気功療術大会が開催されました。総合大会長は秦西平氏。前回に引き続き、多数の気功師や武術家、研究者などが参加し、日ごろ培った技や、研究の発表を行いました。

広島城下町の風水

総合大会長 秦西平氏

 私は17日に「レイクタウンの風水」をテーマに発表しました。(論文の詳細は下記をご覧ください。)
 この論文が「易学大師賞」を受賞し、大変名誉なことと喜んでおります。
 また、18日のワークショップには、会員の近藤あかねさんが、「山口の風水」を発表した後に、会場に隣接する明治神宮の宝物殿周辺の風水を視察。
橘玲華さんは、「金運風水のポイント」を解説。生日の十干ごとの性格と、来年の運気に付いてお話しされました。この結果、お二人とも「優秀国際易学者賞」を受賞されました。おめでとうございます。
 続いて、易友の大久保占い研究室の田中俊平さんが登壇。「ダウジングによる競馬予測法」の解説と会場参加者との実演が行われ、会場は大いに盛り上がりました。この発表は「ダウジング予測師賞」が授与されました。おめでとうございます。

 18日の朝、会場で秦総合大会長より、「世界易経専家委員会副会長」の任命書を授与されました。今後も引き続き協力していく所存です。よろしくお願いします。

  • 大会の様子
  • 大会の様子

    大会会長 秦西平 先生
    (一社)全日本少林寺気功協会 会長

  • 2023年9月 易学大師賞
  • 2023年9月 任命書
レイクタウンの風水

1.はじめに

 風水の有名な言葉に、「山に寄れば健康を、川に寄れば財を得る」というものがある。確かに山に登れば良い気を感じる。森林浴という言葉があるし、山登りは健康につながることは間違いないだろう。一方、川は財運を司ることからきているという。例えばシンガポールでは、風水思想で作られた「マーライオン」、「富の噴水」のほか、百貨店やホテルなどには噴水や池を見ることが少なくない。これらはいずれも財運を呼び込むものとされている。水が果たして財運に関係するものか、検証してみたい。それも、数字がある程度分かる大規模商業施設「イオンレイクタウン」を題材とした。
 レイクは湖のことであるが、埼玉県越谷市にレイクタウンという地区がある。当地は、3つの河川が集まり、平坦な地形から水害に悩まされてきた立地である。これを解消するための治水施設として大規模調整池を造成したもの。
 元荒川を水源とし、地下の水路から水を通して、大規模調整池の北池に貯水している。
さらに、水路により南池に送り、地下水路により中川に合流する。

写真1.地区案内図(看板より)
写真1.地区案内図(看板より)
図1.越谷レイクタウン商業施設配置図
図1.越谷レイクタウン商業施設配置図
越谷レイクタウン
 2008年に街開きしたニュータウン。開発主体は独立行政法人都市再生機構。計画人口は、約22、400人。施工面積は226ha。区画整理地内に大規模な治水施設として大規模調整池(39,5ha)を造成し、同時に池の周辺に商業施設(イオンレイクタウン)や集合住宅、公園などを誘致・建設し、調整池の周辺一帯をニュータウンとして整備した。(ウイキペディアより)

 実際に既存の統計資料を調べてみると地区全体が住宅地としても発展していることが分かる。人口は2015年には10,493人が2020年には20,337人と倍増している。20代と30代を合計すると、2015年では4,710人が、2020年には7981人であり、∔3,271人で、増減率は∔69.4%と多い。そして、住宅購入者、それもマンションの居住者が増えている。
また、JR越谷レイクタウン駅の1日平均乗車人員は27,175人で、武蔵野線で最も多い。

2.風水の古文書「水龍経」より相似性を探る

 中国の明代末から清代初(16世紀末から17世紀初頭)に活躍した、風水学者の蒋大鴻は地仙とも呼ばれる。その著書に「地理辨正」、「陽宅指南」、「水龍経」などがある。なかでも「水龍経」は陽宅(住宅)や陰宅(墓地)と河川や水路、池との関係を解説した名著と評価が高い。この中には様々な図があるが、基本的には家屋の先に河川や水路が取り巻くように流れている形を財運が吉。一方、逆の形であると凶としている。 様々な図の中から、レイクタウンに似たものを探してみた。すると、「兜抱格」というものが似ていることが分かった。これは、水流が家屋を抱き抱えるような形である。
「水龍経」の一文には次のように書かれている。

図2.水龍経の図
図2.水龍経の図
束帯格(そくたいかく)
原文:束帯水纏身家中良積金
若然為家穴後代可成名
翻訳:束帯水を身に纏うと一家は蓄財に良い
若し墓を作れば、後代まで名をなす。
解釈:束帯は貴族高官が身に纏う正装。ここでは帯を意味する。つまり、家屋を身体とし、取り巻くように流れる川を束帯に例えたもの。
もし このような場所に墓を作るなら、子孫は名声を得る。
兜抱格(とうほうかく)
原文:前後水環兜 富貴総無休
翻訳:前後は水の兜で環る。富貴は総て休むことはない。
家屋は頭で、取り巻くような池と川は兜。このようであると富貴が長く続く。

この図では、屋敷の表側が池の方へ向いており、川あるいは水路が屋敷の横を通り、背後に流れ出している。実際のレイクタウンの池は、「水龍経」の図を反転させた形となっている。完全に同じではないが、相似性を持つものと考えた。

3.イオンレイクタウンの風水

 2008年10月にグランドオープンした日本最大の大規模商業施設である。Kaze棟、アウトレット棟、mori棟の3棟で構成され、合わせると24万5千㎡もある。
年間平均来場者数は約5千万人とされ、年間の売上高は1千億円以上とイオンが発表している。コンセプトは「シゼンに心地イイ、ワタシに心地イイ」
 「イオンレイクタウンmori」(以下「mori」)は3つの商業施設の中で最も大きく、水を使った「風水」の環境をあちこちに見ることができる。そして、実感としてとても心地良いのである。

写真2 「mori」
写真2 「mori」
写真3 前面に作られた水路(束帯水)
写真3 前面に作られた水路(束帯水)

 「mori」は「兜抱格」の図から見ると、その範囲からは外れているが、写真3のように、「mori」の前面に作られた水路によって。「束帯水」となっている。
 写真4は「mori」の玄関前にある噴水であるが、このように水と親しむ環境を作っている。

写真4 噴水で遊ぶ子供たち
写真4 噴水で遊ぶ子供たち
写真5 フローフォーム
写真5 フローフォーム

 「mori」のエスカレーター傍には変わった設備がある。
「フローフォーム」と。表示されている。金属の皿状のものが連なった階段から水がすべり落ちていく。下の池を見ると、鯉が泳いでいる。この場所は、何人もの家族連れが覗き込んでいた。実際に心地良いと感じられるのであろう。

写真 6説明文
写真 6説明文

 説明文には、何と「風水効果」と書かれているではないか。
④微弱な風を発生させる事による、気と場の浄化とある。

4.風水と気の関係

風水の原典と言われる、「葬経」には風水を定義したという言葉がある。
著者 郭璞(かくはく) 276年~324年

原文:葬者,乗生気。気乗風則散,界水即止。古人聚使不散,行之使有止,故謂之風水。
翻訳:葬者は生気に乗るなり。気は風に乗じて散じ、水に界(くぎ)られれば止まる。
古人は集めて使い、散らないようにした。これを行いて使い止めるあり。故にこれを風水という。
原文:而其中得水之地為最好,以藏風之地次之。
翻訳:すなわち、その中でも得水の地が最も好く、もって藏風の地はこれに次ぐ。

 この意味は、埋葬した者は、大地の生気を受ける。気は風により散り、水にくぎられると止まる。昔の人は気を集めて散らないようにした。これを行って止めた。故にこれを風水という。つまり、気は水があれば、そこに止まると述べている。
 藏風の地とは、風をおさめることで、気が発生する場所の背後に屏風のような山があれば風を防ぎ、気が散ることは少ない。しかし、水がある場所の方が良く、屏風のような山がある場所はこれに次ぐと結論付けている。
 このことから考えられるのは、気が発生する地の傍に水があると、気が水に溶け込み、生気となる。そして、生気とは「成長の気」であるのだ。
 この原理を考えれば、この特徴を具えた場所を探せば良いということになる。少し飛躍して考えれば、そのような場所を人為的に作れば良いということは想像できる。
 もう一度コンセプトを紹介すると、「シゼンに心地イイ、ワタシに心地イイ」である。
 気が良い空間ができることにより、客が多く集まり、滞留時間が長くなれば、自ずと客単価は高くなるし、年間販売額も相乗効果として多くなると考えられる。もちろん、店舗面積と商品力は考慮した上の話しではあるが。

5.まとめ

 中国での風水には、「地理風水」と「陽宅風水」加えて「陰宅風水」がある。「地理風水」というのは、都市計画に使われた風水で、我が国では、平城京や平安京で用いられたという。そして時代は下り、江戸時代では城下町の形成にも、その片鱗が見られる。しかし現代においては都市計画として見ることは無いと考えていた。風水といえば「陽宅風水」であって、一般的には邸宅の風水である。そして、「陰宅風水」は、墓地の風水を指すのであるが、中国では近年まで都市部を除き土葬であり、風水形式としての特徴がある。一方、我が国では仏教形式で石の墓である。よって、陰宅風水は一般的に見ることはない。
 この論文では、現代において果たして「地理風水」というものがあるのか。それは、合理的な説明が成立できるのかを考えた。すると、置き換えということで説明が付きそうである。つまり、古代都市における王宮。中世における城。現代における大規模商業施設は、中心性を持つ。先行した土地区画整理事業の中核事業として、「大規模調整池」の開発。それに続いて、「イオンレイクタウン」の開発が行われた。偶然かも知れないが、結果的に「地理風水」の古文書から相似性をもって説明がつく。それとは別に「イオンレイクタウン」の中にも「風水」の文字が発見できた。このようなことから、現代社会において、気候温暖化が進むばかりであるが、都市計画において、風水は防災、健康、経済など各分野において重要な役割が期待される。

参考文献

  • 「秘伝水龍経」 蒋大鴻 輯訂、程穆衡 校録 (武陵出版有限公司)
  • 「長安の都市計画」 妹尾逵彦 著 (講談社選書メチエ)
  • 「風水の本」 鮑黎明ほか 著 (学研)
  • 「風水とまちづくり戦略」 植草鋼一 著 (コミュニティブックス)